科学哲学の冒険

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

昔 fj.soc.pseudo-science があったころ (今でもあるんだけど)「理系の人間は自分の立場が素朴実在論であることに無批判すぎる。実在論と観念論の長い長い議論を知らない」と言う発言を見たことがある。
この本はその実在論 v.s. 観念論 v.s. etc のな〜〜が〜〜い議論の入門書。
戸田山和久代理人であるセンセイと立場が違う2人の学生(リカ、テツオ)が掛け合いをしながら進んでいく。読者が疑問に思いそうな点に2人の学生がつっこみを入れてくれるので、読んでいて分かりやすい。自分としてもヒューム・ポパー・クーンまでの議論は承知しているが、それ以降の議論はあんまり知らないので読んでいて面白かった。
逆に不満なのは、自然「科学」だけを取り上げて数理「科学」が論じられない点や、認識論以外の「科学の応用である技術・工学が社会にどのように影響を与えるか」というテーマがほとんど採り上げられていない点。

あとソーカルには触れられているけど、文化人類学の Human Universals の観点も紹介して欲しかった。学生の「ジェンダーは社会的に構成されている」とか「色の区別は曖昧」とかいう発言には、センセイのつっこみが入れられそうなのだが。